あめあめふれふれ

僕は、雨の日が好きだ。
ただ、雨の日に外に出るのはけっして好きではない。傘は持ち歩かなくてはならないし、靴は濡れるし、いろんな場所に湿気と匂いがこもるし。気持ちがいいものではないです。
僕が好きなのは、家の中にいて外で雨が降っているのを感じること。雨が降る音だとか、ちょっと匂いの違う空気だとか。カラッと晴れる日も悪くないのだけれど、しっとり雨が降っている日が一番いい。
雨の日は、家の中にいてもなるべく外を身近に感じたいと思う。レースのカーテン越しに少し色あせた風景を眺めて、窓を開けてひんやりとした空気を足元に感じて。そうすると、不思議と落ち着いてくる。いいなあと思う。
雨の日は、外の音も違って聞こえる。環境雑音というか。雨が降っていると、いつもの乾いた音は身をひそめて、代わりに雨の音が支配的になる。小さなたくさんの雨粒が、少しずついろんなものを叩いている音が聞こえてくる。世界が一段階だけトーンダウンしたような感じがする。
昔はこんなこと思わなくて、晴れていればそれでいいと思っていた。農業やっているわけではないのだし、雨なんて降らなくていいと思っていた。気づいたのは最近だろうか。雨の日を好ましく思うようになっていた。雨が降っていると気づくと、不思議と少しうれしい感じがするようになった。少し寒くても、そろりと窓を開けるようになった。
もちろん、晴れの日があってこその雨の日なので、いつも雨がいいと思っているわけではない。でも、害のない程度に、程よく雨が降ればいいと思う。